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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!

今回の服好きゲストは、エディフィスでプレスを務める内田捺史さん。
1.〈LEVER〉の革靴

「このリーヴァーのブーツは、25歳の節目として買った靴。僕は、革靴だからといって気にせずチャリに乗るし、雨の日でも履いたりします。でも、この靴を履くのは特別なときだけ。いつか、息子にあげられたらと思っています」

「やっぱりエディフィスって、『いい革靴のひとつは持っとけ』みたいなカルチャーがあって。それは僕のなかでは、緊張感を持つ、ってことだと思っています」

「アパレル業界に入るまでは音楽をやっていたのですが、僕にとって、ファッション感覚のルーツもそこにあります。ジャズマンは、ステージに上がるときに絶対にジャケットを着るんです。そこにはいろんな背景もあるし、彼らなりのプライドもある。自分のなかでは、革靴はそうしたことと通じている気がします。デニムを穿いていても、革靴を履いて、ちょっとした緊張感を持ちたいんです」

「僕も、新卒の子たちには、『いい靴履けよ』って言っちゃうんです。とくに、若いからこそできる“身の丈に合わない買い物”って、ものすごく価値があると思う。結果的に買ったものを手放したり、革靴にハマらなかったりしたとしても、ちゃんと本物のいい靴を履いてきたっていう経験は残ります。僕だってまだまだ足りないですが、後悔しない程度には買ってきたとは思っています。そうしてきたからこそ、いまは自分なりの物差しでいろんなものを見ることができています」

「いま、そういう買い物をしている子たちって、どうしても少ないですよね。ただ先輩が『良い』と言ったから買う、とか、僕らはしてましたけど、それって、勉強の仕方が他になかったから。いまは情報が山ほどあるし、その情報をすくって上手に買い物できる。いまの子たちは、買い物が上手いと思います。でも僕は、もっと失敗していいと思う。経験から知識になることの価値を知ってほしいと思っています」
2.〈renoma×EDIFICE〉のサファリジャケット

「新卒入社後1年間エディフィスで働いて、それからレショップに3、4年所属し、またエディフィスに戻ってきました。この8月からプレスとして働いています。このジャケットは、そのエディフィスに戻ってきたタイミングで買ったもの」

「新宿店の店頭にこれが掛かっているのを見つけて、一瞬で『買おう』と思いました。見た瞬間に、『カッコいいブランドに戻ってきたな』って改めて実感した。このブランドでふたたび頑張る覚悟ができたというか」


「レショップにいたころから、このプロジェクトが進行してるのは知ってて、『いいな。エディフィス、カッコよくなってきてるな』って感じていました。たぶん、いつかあそこに戻るだろうって、そんな予感もあって」

「レノマはめちゃくちゃ好きなブランドですが、そこに、自分たちのブランドのネームが入っている。こんな風にネームが並ぶって、じつはすごいことだと思います」

「オリジナルでも別注でも、カッコいいものはちゃんとカッコいいと自信を持って言って、それを着て、伝えていく。そうやってブランドを背負っていきたいと、プレスになったいまは、以前に増して思っています」

「『これカッコいいっすね! 買います!』って僕が言ったとき、先輩たちが、なんかうれしそうにしてた気がするんです。僕もプレスとして、5年後なのか10年後なのか、服好きの若い子にそんな風に言ってもらえるような仕事をしたいと思っています」
3.〈ENCOMING×EDIFICE〉のロングコート

「24AWに別注したコート。当時はエディフィスの店舗にいながら、バイヤーについて回って仕入れのサポートやアシスタントみたいなことをやっていました。これは、その頃に携わって、一緒に形にしていったもの」

「バイヤーと遅くまで会議したり、手が擦り切れるほど生地見本を触ったりしながら完成まで携わった初めての別注企画で、人生を変えた1着です」

「つくりながらお客さんの顔も見えていて、20本限定でしたが、しっかり売り切りました。商品は現場で生まれる、と思っていますが、まさにそれを実感しましたね」

「デザイナーの加藤さんとよく話していたのは、昔の画家が、アトリエでの作業のあいまに、玄関に掛けたジャケットをさっと羽織って外に出る感覚がいい、というようなこと。別にジャケットなんて着る必要ないはずなのに、そこにこだわりがある。内側に向けて格好つけるような感覚なのかも。そういう感性が加藤さんと僕らのあいだでシンクロして、このコートで表現できたような気がします」

「それは、さっきの緊張感の話とも通じますね。僕も休みの日はある程度カジュアルな格好をします。でも、子ども抱っこしてスーパーへ行くときに革靴を履いてたりもして。めちゃくちゃアホなことしてるなってわかるんですけど、でも、抜けないんですよね。そうじゃないと、なんか気持ち悪いというか」

「普段のオフィスを見渡しても、エディフィスのスタッフはみんないつもスカーフ巻いてるんですよ。ただデスクワークしているだけなのに。ほかのブランドから明らかに浮いてます。でも、無駄なことやってるそのひとたちが、僕も好きっていうか。なぜか、いいなと思うんですよね」

EDIFICE プレス
内田捺史 さん
1996年生まれ、東京都出身。2019年にベイクルーズ入社。EDIFICE、L’ECHOPPEを経て、現在はEDIFICEでプレスを務める。学生時代から音楽活動を行い、さまざまな音楽やミュージシャンのスタイルが自身のファッションルーツに。また、楽曲制作をおこなったり、ギタリストとしても活躍中。
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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