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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!

今回の服好きゲストは、トゥモローランドでショップスタッフを務める郷 琢哉さん。
1.〈HERMES〉のスカーフ

「ファッションの入り口はアメカジだったんです。だからアメリカンカルチャーも好きで。このアメコミモチーフのエルメスの『カレ』は一目惚れでした」

「大学の卒業旅行でイタリアに行ったとき、通りかかったエルメスにふらっと入って、そしたら、ちょうどこれが大きく飾ってあったんです。表面のセリフはフランス語で、裏はそのままのデザインで英語になっていて、『これはヤバいな』って」


「色合いもちゃんとアメコミ感があって、でも、このエスプリ感。やっぱりさすがのクリエーションだなって思いました」

「ヴィンテージのエルメスも好きですが、意外とつけにくかったり、雰囲気が出過ぎちゃったりする。僕のスタイル的には、このくらいガチャガチャしてるほうが合うんです。エルメスの現行品もやっぱりいいって知った1枚」

「たしか、トゥモローランドの入社式にもつけていったと思います。社内に『カレ』をつけている人は多いですが、そんななか、僕はこれを選んでよかったなと思っています」
2.〈MARINA YEE〉のリメイクジャケット

「マリナイーが、所持しているデッドストックを使ってアップサイクルするシリーズがあって、このジャケットもそのひとつです。ハンドメイドの一点物、こういうものは昔からすごく好きですね」

「もとはサイズ56のダブルブレステッドということで、半端なくデカいんですが、一部をつまんでシングルのジャケットにしている。肩はそのままめちゃくちゃパワーショルダー。面白いバランスで、気分の上がる1着です」



「さっきも話したように、もともとアメカジ好きだったので、こういう“ザ・モード”みたいなものを手に取るようになったのは、この会社に入ってから。それでも、ドリス(ヴァン ノッテン)とかマリナイーは、トラッドベースでやっているのでわりと僕のスタイルにも取り入れやすいんです」

「普通に着てもいいし、あえてダブルにして着るとツイストした新鮮なシルエットになる。いろんな着方が楽しめます。ミュウミュウなんかも流行っているなか、いまドンピシャっていう感じもする。おじいちゃんのジャケットを借りました、みたいな。カッコいいですよね」
3.〈Nick Fouquet〉のオーダーハット

「高校の卒業旅行では、アメリカにも行きました。このニックフーケのハットは、そのときにカタコトの英語でオーダーメイドしたもの」

「ずっと憧れでした。ちょうど店舗のあるLAに行くと決まって、行くからには、絶対に作ろうと思って」


「表地から、リボンも裏地もひとつずつぜんぶ選んで。で、フィニッシュの工程でハットに火をつけるんです。そのときに使われたマッチがこうして付属します。後日、出張でパリに行くときの空港で、マッチの存在を忘れていて止められてしまって(笑)。マッチとライターを両方持っていると飛行機に乗れないんですよね。もちろん持っていたライターは諦めて、1回だけ、このマッチを使ってタバコを吸いました」

「じつは昔、祖母が服作りを仕事にしていて、僕も遊び道具感覚でミシンを使ったりしていました。それから文化服装学院に入って、ファッションを勉強しながら、僕もいまだに服作りをずっと続けています。だから、やっぱりオーダーメイドには惹かれるところがある」

「入社してから開催されたイベントでも、ほぼ必ずオーダーしています。オーダーしたものって根本的に自分の好きなものの塊なので、既成服とはぜんぜん違うんですよね。深く考えずオーダーしたものでも、合わせて着てみると、自然とまとまったり。なんだかんだ手放したこともありません。大人になるにつれ、『一生着られる』みたいなところには、より魅力を感じるようになっている気がします」

TOMORROWLAND ショップスタッフ
郷 琢哉 さん
TOMORROWLANDでショップスタッフを務める。
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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