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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。前回に引き続き本記事でも、スタイリスト三浦翔平さんが「キモさん」と慕う兄貴的スタッフがいる町田の「トレディーチ」を紹介。
町田 TREDICI(トレディーチ)
町田の「トレディーチ」は、週末や祝日は入店待ちになることも多い人気古着店。「何コレ?」という意外で、色気のあるアイテムが見つかると三浦さん。マネージャー「キモさん」の存在もトレディーチを推す理由だ。
今回のお店を訪ねたのは…
【お店の注目ポイント】
柄モノからヴィンスウェまで
学生時代とはテイストが変わっても
欲しいモノが見つかる

スタイリストの三浦さんは今から10年ほど前、仙台にいた大学生の頃、SNSでトレディーチの存在を知った。当時は柄モノなどエッジのきいた古着が好きだったこともあり、夏休みなどに上京しては足を運んだ。ちょうどその頃、スタッフに加わった木本祥太さんとの出会いもあり、東京に住むようになってからも通う古着店に。
2009年10月にオープンしたトレディーチは、店主の飯酒盃(いさはい)謙二さんが年間100日かけてアメリカで買い付ける、生地にこだわった古着でクリエイターからも一目置かれる名店。昨年3月には代々木八幡にもクラシックな古着を中心にした2店舗めをオープンした。

トレディーチに来るのは久しぶりという三浦さんだったが、木本さんはしっかり三浦さんのことを覚えていて、ブランクを感じさせない笑顔で迎え入れてくれた。「キモさん(木本さんのニックネーム)、お久しぶりです!」と三浦さんも大好きな先輩に会うような親しみを込めて挨拶。

三浦さんは入口すぐ左手のアートTシャツコーナーから壁に沿って古着を見始める。「トレディーチにはアートTのイメージがあります」と三浦さん。壁にはピカソやゴッホがかかっているように、オープン当初からアート&ミュージアムTには注力してきた。
Tシャツのラックをさくさくと見ていくと、気になるグラフィックを発見。

「ウェグマンのTシャツだ! かわいい」と体に当てサイズ感を見る三浦さん。
ウィリアム・ウェグマンはアメリカの写真家・芸術家で、愛犬のワイマラナーを被写体にしたユーモラスな作品で有名。ローラースケートを履いたワイマラナーのTシャツもCGなどではなく、実写の写真という点が素晴らしい。「身幅もたっぷりしたボックスシルエットだから着やすいと思うよ」と木本さんがサラッと解説してくれる。

「20代前半は柄モノに目がなくて。トレディーチに来ればちょっと変わっているけれど野暮ったさのない、それが色気になるような唯一無二の古着が見つかるという印象があります」と窓側の柄モノの多いコーナーで三浦さんが語ると、「生地や素材にはこだわっているから、そこが品のよさにつながるんだよね」と木本さんが応える。

そんなやり取りをしながらも手を留めずに古着をチェックしていた三浦さんは、ラックからフリンジとコンチョが付いたTシャツをピックアップする。「これは下に白Tを入れているんだけど、VネックTにレザーの飾りが付いていて、一応洗えるという表示にはなっている」と木本さんが言うと、「こういう強烈な一点ものが見つかるのがトレディーチなんですよね。最近はミニマルな服を着ることが増えましたが、以前ならこういうカブらない古着に飛びついていました」と三浦さん。

珍しいアイテムを見たとき発する「何コレ?」の言葉に、昔の記憶がよみがえる。
「僕とキモさん、『何コレ?』でよく盛り上がっていましたよね!」(三浦)「うちは『何コレ?』ばかりだからね(笑)」(木本)「理解できない服が多い、それが面白いんです!」(三浦)。
そんなやり取りの中、総柄のパイルシャツを「暑そうだけど…」と試着する。「パイルだから夏のアイテムではあるよね。でも暑いかと訊かれたら確実に暑いよね(笑)」(木本)。「ファッションてそういうものですよね(笑)」(三浦)。軽快なかけ合いが続く。

クラシックスポーツ系の古着を集めたコーナーではリンガーTに目を留める。
「この配色、ヤバくないですか?」(三浦)「ヤバいよね。サイズも大きめで、合わせやすいと思う」(木本)。ここではベースボールパンツにも反応して「元高校球児」だった過去を告白。木本さんは「バスケとダンスをやっていた」と、さらに会話が弾む。

「ヴィンスウェ(ヴィンテージスウェット)は好きで必ずチェックするアイテムのひとつ」と三浦さん。ヴィンテージならではの半袖ラグランスウェットやカレッジロゴだけでなく、あまり見ないブルゾン型のデザインなど気になるものを次々と手に取る。「珍しい! 汚れも愛おしいです」と三浦さんのアンテナに触れるものばかりだ。

三浦さんに似合いそうなおすすめアイテムを木本さんに尋ねると、「前は柄だったけど…今なら、こういうものは着そうじゃない?」と壁にかかっていたピーターパンシャツを推薦してくれた。「ボタン位置が変わっていますね」とコメントしつつ、しばし木本さんの解説に耳を傾ける。

さらに三浦さんが回遊を続けると木本さんが「ショーツはどう?」とレジ前のショーツコーナーへいざなってくれた。
「きょう僕が穿いているローゲージシルクのショーツもラインナップしているけど、リネン素材もあって全部デッドストック。お買い得だと思う」(木本)「この辺のチェック柄かわいいっすね」(三浦)。今の気分に合ったようで、丈感などを真剣にチェックした。
スタイリスト三浦さんが
「トレディーチ」で
ピックアップしたもの5選
最近はこの日の私服のように、シンプルながらシースルーシャツやラメパンツといった今の空気感を落とし込んだスタイルにシフトしたという三浦さん。「心惹かれる柄モノもあったのですが、今回クラシックなスポーツ古着が気になりました」ということで、この5選に落ち着いた。
1_灯台柄ベスト

総柄アイテムで人気を博すミシガンラグ(MICHIGAN RAG CO.)は現存するアメリカのアパレルブランド。「アメリカ各地の灯台をイラストで描いたベストは、イラストがネイビー一色で大人っぽいと思い選びました。Tシャツやシャツに羽織るだけで、スタイリッシュなムードが演出できそう」(三浦)。
2_チェックリネンショーツ

トレディーチが推しているリネン素材のショーツもピックアップ。「ベージュにオフホワイトのワントーンチェックが夏場は無地よりもいい気がしました。2タックで麻だからオジっぽい雰囲気ですが、トレンドアイテムを中和してくれそうでこれはグッときました」(三浦)
3_ヴィンテージスウェットブルゾン

ピンクっぽい赤と小豆色のようなリブのラインがアクセント。「ヴィンテージスウェットのフルジップ型は希少ということもありますが、加工では出せない乾いたスウェットの素材感にも惹かれました。縮みも含めて、この年代特有のコンパクトなサイズ感が好きです。ブルゾンタイプはレイヤードも楽しめるので、コーディネートの幅が広がりそう」(三浦)。
釣り編み機で時間をかけてつくっていた時代独特の丸胴(サイドに縫い目がない形)のスウェットだと木本さんが補足してくれた。
4_ベースボールパンツ

ニッカーボッカーから派生したことがわかるクラシックなベースボールパンツ。「これはもう独特の丈感が今の気分にバチッときました。スタイリングのしがいがある丈なんですよね。グリーンのサイドラインもきいているし、今ならジャケットに合わせたいなと思います」(三浦)。
5_クラシックサテンパンツ

化繊のサテンを使用したサイドライン入りのジャージパンツ。「ジャージもサテンだとカジュアルすぎず、ちょっと色気があってドレッシーにはけますよね。ハズしアイテムとしても万能だと思いました」(三浦)。サイドラインがニットでなくピケのような生地というのもクラシックなポイント。
【古着でコーディネート】
クラシックなリネンショーツに
スポーツ要素を加えてモダンにアレンジ
気になるテキスタイルが多かったショーツから、クラシック度の高いリネンチェックの2タックデザインを選んだ三浦さん。「買おうと思うぐらい気に入ったので、これを主役にしてコーディネートを組んでみたくなりました」(三浦)。

スタイリングでは「ショーツのオジな雰囲気を活かしつつ、少しハンサムな白のテーラードジャケットを合わせました。素材感と色みは合わせつつ、パッチポケットのデザインでカジュアルな印象にまとめています。トレディーチらしいサイクリングディテールの柄シャツを足してハイブリッドなスポーツMIXにスライドさせました」と三浦さん。
この日履いてきたナイキのソックスが見事にハマって、パンチングレザーのLafattio(ラファティオ)のスリッポンもコーディネートを引き締めている。

「ちなみにナイキのソックスに遊び心があるので、ジャケットのインナーを白Tにしてシンプルに着こなしてもいいと思います。足し算、引き算でいろいろと楽しめるショーツですよね」と2スタイルを披露してくれた三浦さん。木本さんが隣に立ってくれるたことで、シンプルさが際立った。
取材を終えて
古着の街、町田の中でも雑誌などメディアへの登場率が高いトレディーチ。頼れる兄貴的マネージャー、木本さんの存在も大きく、三浦さんも古着を通して会話のキャッチボールを大いに楽しんだ。「よく通っていた頃と同じように、変わったモノが多くて心が躍りました。学生気分でキモさんと談笑できたのもうれしかった。この後、ショーツを買って、もうちょっとキモさんとも話したいと思います」(三浦)。
オーナーが自分の感覚を信じて買い付けるアメリカ古着は独特で、目がけてくる顧客が多いのも納得。「洋服にあまり興味がない人にも古着の楽しさを伝えたい」という木本さんは本当に頼りになるので、ぜひ足を運んでみて!
【動画公開中】
紹介しきれなかったアイテム&
軽快なふたりのかけ合いは動画で!
茶目っ気があってトークも達者な三浦さんと、ほどよい距離感で接客してくれる木本さん。ふたりの楽しいかけ合いはもちろん、「何コレ?」な変わりダネから希少なヴィンテージまで、トレディーチの魅力がたっぷりの動画をお見逃しなく。
SHOP DATA
住所:東京都町田市中町1-18-2 WOODBELL 3-B GoogleMap
営業時間:12:00~20:00 不定休
Instagram:https://www.instagram.com/tredici.13/

Photos : Kaho Yanagi
Movie : Yumi Yamasaki
Movie Edit : Yuki Hayashi
Composition & Text : Hisami Kotakemori
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