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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。今回はスタイリスト中道康生さんが、代々木八幡のユーロヴィンテージショップ、シノを紹介してくれた。アメカジ古着とはひと味違うラインナップに心が躍る!
今回のお店を訪ねたのは…
代々木八幡 sinot(シノ)
【どんな店?】
レギュラーを掘るだけでも楽しい
ヨーロッパ古着に特化した気鋭店
代々木八幡宮の向い側、山手通りのビルの1階に店を構えるシノ。オープン中は「sinot」の看板が店先に置かれ、シルバーのドアが開いていて入りやすい雰囲気。スタイリストの中道さんは友人にシノを紹介され、自転車通勤の通り道ということもあって、すぐに常連になった。

大きなガラスの窓際には花瓶やテーブルウェアが並び、外から見ると古着屋には見えない。小田急線の代々木八幡駅から徒歩7分ほどで、原宿・渋谷からもアクセスしやすいエリアながら人通りは少なく、どこかゆったりとした時間が流れている。

シノは2021年9月にオープンした比較的新しい古着店。ユーロヴィンテージが好きな北海道出身の同級生コンビ、木村謙太さんと野口尚史さんが共同で出店した。木村さんは古着屋出身、野口さんはセレクトショップや家具店で働いた経歴があり、ふたりの個性がいいあんばいにシノの商品構成に反映されている。

店舗はコの字型で奥に深く、入ってすぐの一角はレディース古着のコーナー。オープン当初はメンズだけだったが、昨年からレディースにも力を入れるように。カジュアルだけでなく、マックスマーラのようなブランド古着も見つかる。現在は全体の2割ほどを占め、今後も増やしていく予定だとか。

店舗のメインスペースはレジから先で、奧に向かって右手にラック、左手に棚があり商品が見やすく陳列されている。買い付けはフランスとイタリアがメイン。ヴィンテージだけでなく、レギュラー古着も充実している。通年でレザーアイテムが並ぶのもユーロ専門店らしい。ラックには主に80年代から2000年代のレギュラーもののブルゾンやジャケット、シャツなどが、アイテム別に分かれている。50~70年代の古いものがまぎれこんでいることも。

左手の壁にはユーロヴィンテージ好きにはたまらない、マキニョンと言われるヨーロッパの農夫の作業着がディスプレイされている。ここに並ぶのは主に1920年代から1940年代のもの。ワークウェアながら洗練されているのが魅力だ。その奥の棚にはユーロリーバイスのようなデニムやパンツ、スラックス類が下段に、上段にはTシャツ、ジャージー類が並ぶ。

そして店の一番奥がシノの真骨頂ともいえる、ミリタリーとワーウェアを集結したヴィンテージエリア。フレンチリネンジャケットのような王道のものだけでなく、ミリタリーならズアーブパンツ、ワークウェアでは養蜂用のフードアウターなど攻めたアイテムも散見する。この奥に試着室があり「できるだけ多くの人ユーロヴィンテージを見てほしい」と願う、店主の熱い思いが垣間見える。

ちなみにレジ台を兼ねる入口のガラスとウッドのショーケースにもバスクシャツやフェードしたワークジャケット、コンバースのデッドストックなどが並び、洋服好きの心をつかむ。
【スタッフはどんな人?】
ヴィンテージの持つ
ストーリー性を大切に伝える
店頭に立つシノのオーナー・野口尚史さんは北海道・札幌出身。中学時代に同級生の木村謙太さんと出会い、高校生の頃にはふたりともユーロヴィンテージに傾倒。札幌の古着の名店に通って知識を深めた。野口さんは父親の転勤で高校在学中に東京に移転。高校・大学と東京のユーロ古着屋めぐりに明け暮れた。

大学卒業後はセレクトショップや家具店などを経て、木村さんと念願のユーロヴィンテージショップ、シノを出店。バイイングは主に木村さんが担当しているが、最近はパリなど海外でポップアップショップを行う機会もあり、その際は野口さんも買い付けに足を運ぶ。ヴィンテージの持つストーリー性を大事にした接客には定評がある。
「シノはヴィンテージを店の中心に据えています。ほかにないもの、こだわりが詰まったものも多く、接客していく中でその魅力を伝えることができればと思っています」と野口さんは、静かに熱く語る。
代々木八幡 sinot(シノ)の
おすすめアイテム5選
年に4回ほどヨーロッパにて、各国のワーク、ミリタリーのヴィンテージを中心に、1950年代から2000年ぐらいまでのカジュアルやドレスアイテムも買い付ける。ほかでは見ないような古着が見つかるシノのおすすめ5選を紹介しよう。
1_ナイロンワークコート

クラシカルなタイロッケンスタイルのワークコート。「ナイロンがポピュラーになり始めた60年代のワークコートです。タイロッケン仕様のワークコートはほかのファブリックでも見つかりますが、ナイロン素材は発色のよさが魅力です」(野口)。シノではホワイトのほかブルーもラインナップしている。
2_セルジオ タッキーニの
スポーツジャケット

テニスプレイヤーのセルジオ・タッキーニが1966年にスタートした、今も続くイタリアのスポーツウェアブランド。「巷ではアディダスのスポーツジャケットが人気ですが、シノではイタリアのスポーツウェアを推しています。セルジオ タッキーニは、その代表ともいえるブランド。カラーブロックや刺繍のモチーフがキャッチィです」(野口)。
3_ルコックのジャージージャケット

2024年のパリ・オリンピックでもフランス選手団のユニフォームを手がけた、フランスを代表するスポーツブランド、ルコックスポルティフ。「70年代のジャージー素材のトラックジャケットです。ヨーロッパものには珍しい、フロッキー風のプリントを使っているのが特徴です」(野口)。

背面にもアーチロゴがフロッキー風のプリントで施され、襟や袖のラインもしゃれている。ショート丈&コンパクトなサイズ感が今のファッションとリンクする。
4_フランス軍のショーツ

シノの本領でもあるフランス軍のヴィンテージショーツ。「このオレンジっぽく褪せた色みがいいんです。元は濃いベージュ色で、日焼けしたとしてもなかなかこんな色にはならないと思います。フランス軍のユニフォームは内側に年代を特定するスタンプが押されていることが多いのですが、それも消えていました」(野口)。
5_デッドストックのワークショーツ

紙タグがついたままの50年代のデッドストック。「ユーロヴィンテージファンの間では、風車のロゴでおなじみのフレンチワークブランド『モリネル』です。今も存続しており、コム デ ギャルソンとコラボして一躍有名になりました。このショーツは裾がダブルになっていたり、ディテールも凝っています」(野口)。

「AU MORINEL」のブランド名に上に風車のマークがある50年代の紙タグ。布タグにも風車が使われ、ロゴのフォントが変わった後も、風車マークは生き延びた。知らないブランドと出会って、知識を深めるのも楽しい。
次回はスタイリスト中道さんが
気になったアイテムやコーディネートを紹介!
SHOP DATA
住所:東京都渋谷区元代々木54-1
営業時間:12:00~22:00 無休
Instagram:https://www.instagram.com/sinot.clothing/

Photos:Kaho Yanagi
Composition & Text : Hisami Kotakemori
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