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俳句とイラストで綴る恋の風景【フルーツポンチ村上健志の17音のラブストーリーズ】Vol.7

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連載「フルーツポンチ村上健志の17音のラブストーリーズ」

お笑い芸人としてだけでなく、独特の視点とセンスで詠む短歌と俳句が話題の、フルーツポンチの村上健志さんの連載。メンズノンノWEBでしか読めない、”恋”にまつわる俳句とエッセイ、そしてイラストを隔週でお届けします!

劇的な別ればかりではない。土砂降りの雨の中、ビンタを浴びて。喫茶店で水をかけられ。
そんなドラマチックなものばかりではない。

「付き合おう」という告白には失敗がある。「好きだから」という明白な理由がある。関係性を崩したくなくて言えないことがある。

「別れよう」という告白には失敗はない。感情的に発せられた別れなら、説得に応じて考え直してみるということもないことはない。けれどほとんどの場合、一方が別れを決めて仕舞えば相手が食い下がろうがどうすることも出来ない。もう決まっていることなのだ。理由も浮気などの明確な理由ばかりではない。なんとなく覚える違和感、会ってない時の方が安息を感じる、嫌いになったわけじゃないのにだ。それ故、告げられないことがある。別れたいのに悲しませたくないと思ってしまう。自分から別れを告げて悪者になるのが嫌なのかもしれない。別れを告げてもらおうと、怒られてやめていたはずの靴下を脱いで床にほったらかしておく作戦を決行してみる。が、案外優しく片付けてくれる。自分のアイスだけ買って目の前で食べるが、これも効かない。君は良い人だ、けれど別れたい。会うと頭がモヤモヤする。別れを言うしかないのだ。泣かれても心を鬼にしよう。話があるんだと試みるが、なんだか言えない。その空気を作ることができない。揺らいでしまう。それどころか手作りカレーを作る約束をしてしまっている。人参を輪切りにしている。なんの変哲もない日常、今なら言えそうな気がする。「リモコン取って」みたいに「別れよう」と告げる。普通のことみたいに告げる。ようやく言えた。「分かった」とだけ君が言う。君も感じていたのかもしれない。別れなんて案外あっけないものだ。普通にカレーを食べる、最近じゃ一番ご機嫌で話している。やっぱり君とは話がよく合う。話がよく合うからそもそも付き合ったんだった。こんなに可愛い君をどうして好きじゃなくなったのかは思い出せない。人参が少し大きい。


★Profile/1980年生まれ。茨城県出身。お笑いコンビ”フルーツポンチ”のボケ担当。TV『プレバト!!』(MBS系・毎週木19:00~)での奮闘ぶりが話題に。また、情報サイト『好書好日』の連載をまとめた『フルーツポンチ村上健志の俳句修業』(春陽堂書店)も好評発売中。自身のYouTubeチャンネル『フルーツポンチ村上の俳句の部屋』での俳句実況もチェックを!

Haiku & text & illustration : Kenji Murakami

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