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「竜とそばかすの姫」主人公の衣装をデザイン。ファッションデザイナー森永邦彦インタビュー

「竜とそばかすの姫」主人公の衣装をデザイン。ファッションデザイナー森永邦彦インタビュー

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ブランド名は「A REAL(日常)」「UN REAL(非日常)」「AGE(時代)」を組み合わせた造語。2003年から活動を開始し、色鮮やかで細かいパッチワークや人間の体にとらわれない独創的な形状、さらにはテクノロジーや新しい技術を積極的に用いた洋服づくりは多方面で高い評価を得ている。現在公開中の映画『竜とそばかすの姫』では主人公の衣装デザインを担当した。ファッションの可能性を拡張し続けるこの人にインタビュー。

森永邦彦さん

FASHION DESIGNER

1980年、東京都生まれ。早稲田大学在学中にバンタンデザイン研究所に通い、服づくりを始める。2003年「ANREALAGE(アンリアレイジ)」として活動を開始。15年春夏よりパリコレクションデビュー。19年、フランスの「LVMH PRIZE」のファイナリストに選出。同年に第37回毎日ファッション大賞を受賞。20年、FENDIとの協業をミラノコレクションにて発表。今年3月、花をコンセプトにした新ブランド「ANEVER(アンエバー)」をスタート。現在開催中のドバイ万博・日本館の公式ユニフォームを担当。著書に『AとZ アンリアレイジのファッション』がある。

ファッションの領域を超えてみようと思った

――最近も細田守監督のアニメーション映画『竜とそばかすの姫』で主人公のベルの衣装デザインを手がけたことが話題になりましたが、森永さんの仕事は単なるファッションの枠組みを超えて、本当に幅が広いなと思います。

そうかもしれないですね。今はデジタル発表になっていますけど、基本的にはパリでの年2回のコレクション発表があって、それ以外にもいろいろなデザインをしています。もちろんファッションの中で戦うというのが大きな柱のひとつなんですけれども、その領域を超えたところで、例えばクルマの内装デザインだったり、建築のデザインだったり、ヘッドホンのデザインだったり、大きくとらえればこれもファッションだよねというところを、ここ5年ぐらいで積極的にやるようになっています。

――アンリアレイジを始めた頃とは、ファッションに関する考え方が変わってきたということですか?

芯にあるものは変わっていません。日常と非日常をテーマに、ファッションの中で今まで当たり前じゃなかったことを当たり前にしていきたいというコンセプトは変わっていないんですけど、あるとき自分の中でファッションの領域を超えてみようと思ったことがあって。それは新しい縫製技術とかではなくて、まったく使われていない素材や物質をファッションの中に取り入れてみることだったんですが、そのときに全然違う世界が広がっていく感覚があったんです。枠組みを少し外して考えるというのか、こういったやり方でデザインを考えたほうがこれからの時代はきっと面白いことができるかなと思いました。

――アンリアレイジの特徴でもあるテクノロジーや新しい技術との融合というのは、まさにそういった考えから生まれていったわけですか?

そうですね。今までの服づくりのメソッドでは、パリのトップメゾンとかには到底かなわないと思ったので。でも、誰も使ったことのない武器を用いればそれは勝てる可能性も出てくる。事実、今年フェンディとのコラボレーションをやったんですけれども、通常フェンディはすべてイタリア生産でやるところを、今回はアンリアレイジしかできない技術だったこともあって、僕らが日本でつくって納めるという形でやらせてもらいました。これも全然違う武器があったから成し得たことだと思います。

――一方で、洋服づくりは、布があってそれを針と糸で縫っていくという基本の部分は今も昔も変わらないと思うのですが、そのアナログな部分に関してはどう考えているんですか?

たしかに手仕事とテクノロジーは対極にあるんですけれども、それは決して交わらないものではないと思うんです。テクノロジーをいろいろ使っても、やっぱり手仕事で形にしていかないと服にはならないですし、僕自身もテクノロジーではどうしても到達できない、手でしかつくれない服というのをずっとクリエイションの核に置いてやっているので、もしどっちかがなくなったとしたら成立しないんじゃないかなと思っています。


デジタルでつくった洋服をNFTで売っていく

――かつてのコム デ ギャルソンやメゾン マルジェラのように、これまでの価値観を揺るがすようなブランドが登場していた時代もありましたが、今はリアルクローズが主流で、そういった動きが少なくなってきました。モードというもののあり方は変わってきたと思いますか?

どうなんでしょう。ほかにないもので、「次はここだよ」と示してくれるものがモードだと僕は思っていて、それをやるためには戦っていかなくてはいけないですし、そうやってきた先輩たちがたくさんいるので、そこに対する憧れはあるのですが、今は少し方向性が違ってきているのかなって気はしています。何となく3つぐらいの軸に集約されていっていると思っていて、ひとつ目はサステイナブルにどういくか、2つ目は人と人のコミュニケーションをどうするか、3つ目はどう自然と向き合うか。この3つから大きく外れて、新しい価値観を打ち立てるというのは、今はちょっと違うのかなという雰囲気はありますね。

――やっぱり革新的なものがなかなか登場しづらい時代になってきたということですか?

いや、決してそういうことではないと思います。コロナ禍でみんなが同じように厳しい状況になって、絶対にパリコレはやめないだろうというブランドがやめていったり、フィジカルでしか戦ってこなかったブランドがデジタルをうまく使いこなせていなかったり、そういう意味では絶対に変わらない価値観がすごく変わっていて、新しいものが生まれやすい状況ではあるのかなと個人的には思っています。

――森永さんは何か新しいことを考えているのですか?

ほかがやらないことをどんどんやっていくというのは大事なんですけれども、今の若い子たちにちゃんと服が届いていかないとブランドとしては続いていきません。なので、非日常のファンタジーを描きつつ、いかにそれを日常に落とし込んで届けていくかという部分はすごく意識的にやっていく必要があると考えています。通常であればブランドの中にセカンドラインのようなものをつくっていくというのがあると思うんですけど、アンリアレイジはアンリアレイジでやって、それ以外に新しくブランドをつくることで今までローンチできてないマーケット層にアプローチしていこうと思って、今年の3月に「ANEVER(アンエバー)」という、アクセサリーやバッグを主体にしたブランドをローンチしました。

――なるほど。セカンドラインではなく、新たにブランドをつくっていくと。たしかにそのほうが自由度は高そうですよね。

はい。あと、この記事が出る頃には終わっていますが、今度のパリコレでは細田監督を迎え入れて、アニメーションと現実を混ぜた手法でショーを見せようと思っています。ファッションにおけるアニメーションの使い方ってこれまではあくまでもショーのPRみたいな形が多かったと思うんですけど、今回は新たな挑戦としてデジタルでつくった洋服もNFT(ノンファンジブル・トークン。複製や偽造が困難なデジタルデータのこと。鑑定書や所有証明書もひもづけられるため、唯一無二の本物であることが保証される)で売る予定です。

――NFTは今ものすごく注目を集めていますよね。

『竜とそばかすの姫』のベルのドレスもNFTで出すんですけど、それがどういう反応になるか、ちょっと楽しみです。今、映画の観客動員数が430万人ぐらいで、それだけの人がお金を払って見た洋服というのは、なかなかファッションでは生み出しづらい現象だと思うんです。しかも、それが見るためだけのものから、デジタルであってもオートクチュールの1点ものみたいな形で所有できるとなったら、今あるこの現実的なファッションとは違う新たなファッションの価値が生まれると思うんですよね。


花瓶も傘ももっと面白い形ができる

――ファッションデザイナーとしての自分の役割は何だと思いますか?

理想を言えば、アンリアレイジの洋服に触れて、洋服ってこんなに面白いんだとか、洋服でこんなことができるんだと思ってくれて、その中からひとりでもふたりでもいいので、ファッションの世界に入ってきてくれたらうれしいですね。僕自身がもうどっぷりファッションの世界で生きて、20年間ずっと続けて、それでもまだ答えは出ないぐらいこの世界って面白いので、自分がファッションの力に目覚めさせてもらったように、次の世代にしっかり渡していきたいという思いはありますね。

「どっぷりファッションの世界で生きて、
それでもまだ答えは出ないぐらい
この世界は面白い」

――では、10年後とか20年後のファッションってどういったものになっていると思いますか?

最近子どもが生まれたんですけど、この子が30歳とかになる頃はどういう洋服になっているんだろうなって考えたことがあるんです。僕は藤子・F・不二雄さんが好きで、特に『異色短編集』が好きなんですけど、このシリーズは僕が生まれた1980年前後にかけて発表されたもので、そこで描かれていた未来はけっこう現実になっているんですね。Zoomみたいにオンラインでつないで会議ができるとか、iPhoneみたいなものでどこでもコミュニケーションができるとか。その中に洋服は1枚でいいみたいな描写もあるんですけど、やっぱりそこには至ってないんですよね。機能的な部分はもちろん今後すごくアップデートされると思います。でも、本当に自分が好きな服とか、手放したくないものはこの形のまま残るんじゃないかなという気がしていて。というか、そうあってほしいなと思うので、そのためにも頑張らなきゃいけないなと。

――ファッションに限らず、この先新たにデザインしていきたいものって何かありますか?

僕は昔から入れものみたいなものが好きで。それでいったら、洋服だって体を入れるものですからね。なので、花瓶とかをデザインしてみたいです。花瓶ってただ穴が開いているだけじゃなくて、もっと面白い形ができるんじゃないかなと思うんです。あと、傘も気になりますね。今日はすごい土砂降りで傘を差してきましたけど、いまだに傘といえばほぼ同じ形状で、進化していない。もう2021年ですし、もっと劇的に変わっていてもいいと思うんですよ。

――森永さんは、こうなったらもっとよくなるだろうとか、こうなったら面白いよねといったことを常に考えていると思うのですが、物事をクリエイションしていく人間には何が必要だと思いますか? 特に若い世代にとって大切な心得みたいなものがあれば教えてください。

僕自身も高校時代はメンズノンノを読んでいましたし、伊勢谷(友介)さんとかフィーファンとか、安藤(政信)さんを見て、むちゃくちゃかっこいいなと思っていました。高校は私服だったんですけど、クリストファー・ネメスを買ったり、NOWHEREに行ったりっていう感じで、もうファッションの世界にどっぷり心酔していました。でも、時間がたつにつれて、当時持っていた熱とか信念みたいなのはだんだん薄くなってきて。それってしょうがないと思うんです。しょうがないんですけど、自分があのとき感じたことは絶対に正しかったんだと信じ続けることってすごく大事だなと思います。だから、今すごく好きだと思っていることや、すごく引きつけられているものを信じて手放さないようにしてください。

 

Photos:Kyouhei Yamamoto Composition & Text:Masayuki Sawada

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