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池松壮亮、映画「アジアの天使」インタビュー。20代最後に韓国で撮影した物語は「時代の変わり目の作品だと思っています」

池松壮亮、映画「アジアの天使」インタビュー。20代最後に韓国で撮影した物語は「時代の変わり目の作品だと思っています」

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MOVIE

SOUSUKE IKEMATSU

池松壮亮

1990年7月9日生まれ、福岡県出身。2003年に、ハリウッド映画『ラスト・サムライ』で映画デビューを果たす。近年は、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』や『斬、』『宮本から君へ』など主演作で高い評価を得て、数々の賞に輝いている。今後は、2021年公開予定の中国映画『柳川』や『1921』(日本公開未定)などが控えている。

「時代の変わり目に、人と人がつながる兆しを描いています」

近年、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』や『町田くんの世界』『生きちゃった』など、数々の話題作を手がけた石井裕也監督が、新作『アジアの天使』を発表した。主役は、石井監督と幾度となくタッグを組み名作を世に送り出してきた池松壮亮。新しい生活と希望を求め、ひとり息子と韓国にやってきた小説家の剛を、まっすぐな心と優しい佇まいで演じた。共演者をはじめ、韓国のスタッフとともに韓国でのオールロケを敢行する中で、どんな人物、物語を紡いだのか。

「僕が演じた剛は、人生に迷い、コントロールを失いかけている父親です。生活に行き詰まって、兄を頼りに韓国にやってきて、言葉がなかなか伝わらない世界に迷い込む。小説家という役どころは、言葉を超えた心の交流を際立たせるためのもの。なので、韓国では何があろうと首をかしげ続けることや、この世界の疑問をちゃんと疑問として自分に、そして相手に問い続ける強さを意識していました。また、本作は家族同士の緩やかな団結がテーマだと考えていたので、隔たりや違いを超えて、それでもつながり続けようとする愛情と意志が必要でした」

剛と兄はある事件をきっかけに窮地に立たされ、ソウルから旅立つことを決意する。時を同じくして、仕事が思うようにいかない歌手のソルとその兄妹は、両親の墓参りに向かい、2つの家族は邂逅(かいこう)する。そしてお互い意思疎通もわずかに、しだいに心を通わせていく。その物語は、ちょうど撮影をしていた自分と重なったという。

「撮影は2020年2月頃で、日本と韓国の関係が戦後最悪と言われるような状態が続いていて、悲しい事件やニュースをたくさん耳にしました。日本チームが韓国を訪れても、共同作業はリスクが高いのではないかという意見もあった。でも、いざ撮影が始まると韓国の方たちは本当に優しくて温かかった。これまで以上に人と人との分断が進む中で、自分たちは映画を通して手をつなぐんだという気持ちを持つ人が集まっていました。お互いの文化への尊敬もありました。日本の映画やファッションが好きと言ってくれた韓国のスタッフが日本人を退けるはずがないだろうし、韓国映画からたくさん影響を受けた僕が、彼らを嫌いになれるわけもない。人は迷っているときにこそ、物事を見極めるために見つめる。2つの家族を見つめ続けることが、剛の人物像の核になると思って、役づくりをしていました」

「人と人がわかり合えること」「他者と深くつながること」――これはまさに、石井監督のこれまでの作品にも流れている大事なテーマなのだ。

「この映画は、僕が20代最後に撮った物語であり、時勢も含めて時代の変わり目の作品だと思っています。この映画の天使がよき時代の到来の兆しとなるものになったらうれしいです」

 


おすすめのロード・ムービーは?

『リトル・ミス・サンシャイン』
は家族の再生を描く良作!

問題を抱えた家族が1台のミニバスに乗り込んで、娘の全米美少女コンテストに向かうロードムービーです。彼らはそれぞれ問題を抱えているのですが、長い旅をしていく中で、いろいろな事件や歪(ひず)みに向き合いながらつながっていく、温かい再生の物語なんです。舞台や人物像は違うけど、切り口が近い。15年ほど前の作品なので、観たことのない若い人がいたら、ぜひおすすめしたいです。

 

『アジアの天使』



妻を病気で亡くし、生活も苦しくなっていた小説家の青木剛(池松壮亮)は、ひとり息子とともに、疎遠になっていた兄(オダギリジョー)が住むソウルへ渡る。女性歌手のソル(チェ・ヒソ)はかつての人気を失い、今は兄妹と暮らすためにドサ回りを強いられていた。旅に出た2つの家族は偶然出会い、行動を共にするが…。
●7月2日より、テアトル新宿ほか公開
©2021 The Asian Angel Film Partners

Photo:Kenta Sawada Hair & Make-up:FUJIU JIMI Interview & Text:Hisamoto Chikaraishi

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