▼ 広告枠 : front-page archive singular : header ▼

映画監督 今泉力哉の[オフビート映画に惹かれて]10作目:井口奈己『人のセックスを笑うな』

映画監督 今泉力哉の[オフビート映画に惹かれて]10作目:井口奈己『人のセックスを笑うな』

▼ 広告枠 : singular : article-top ▼

▼ WPの本文 ▼

映画監督 今泉力哉のオフビート映画に惹(ひ)かれて

10作目
井口奈己
『人のセックスを笑うな』

『人のセックスを笑うな』

©2008「人のセックスを笑うな」製作委員会

監督/井口奈己 出演/永作博美、松山ケンイチ、蒼井 優、忍成修吾、市川実和子ほか 販売元:ハピネット・メディアマーケティング Blu-ray¥4,290

山崎ナオコーラのデビュー作である同名小説を『犬猫』『ニシノユキヒコの恋と冒険』の井口奈己が映画化。美大に通う19歳のみるめ(松山ケンイチ)は、ある日20歳年上の講師ユリ(永作博美)に絵のモデルを頼まれ、彼女の自由奔放さに吸い込まれるように恋に落ちる。しかしユリは既婚者で、みるめは楽しいほどに切なさも覚えていく。みるめの友人・えんちゃん役を蒼井優が、堂本役を忍成修吾が演じている。

 

恋愛映画で描かれる
ひとりの時間の尊さ

2008年の公開当時、渋谷にあったシネセゾンという映画館で観た、瑞々(みずみず)しくて酸っぱくてとにかくおしゃれな恋愛映画です。黄色い風船。ロバ。バイク(スクータータイプ)。フィッシュマンズ。グレーのダッフルコート。松山ケンイチ。蒼井優。そして永作博美。永作博美。永作博美。大好きです。

永作さんをはじめ、俳優の生っぽいお芝居と画(え)のゆるやかな切り取り方がとにかく心地いい。想っている側の“受け身な人たち”で構成されていて、主人公のみるめやえんちゃんは突然現れたユリの存在にどんどん巻き込まれて気持ちが翻弄(ほんろう)されてゆく。「好きな人には好きな人がいる」という片想い映画の王道の関係性であるのに、なぜこんなにもずっと楽しいのだろう。

この映画の撮影面での特徴は、なんといってもFIX(固定カメラ)と長回しの多さです。基本的に引きのFIXの画で見せる場合、人物や空間を立体的に見せるために人や物に対して斜めにカメラを向けることが多いんですけど、この映画は徹底して「正対」が用いられています。撮影したいものの正面にカメラを構えている。観ながら思い出したのは、山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』とかシャンタル・アケルマンやハル・ハートリーの初期作。正対を好んで使っている映画はいくつか思い浮かぶんですけど、みんな誰に影響を受けているんだろう。小津?

画をかなり広めに切り取っているのも特徴的で、人物が画面の中に小さく配置されている。冬の風景や部屋の空間などが人物と等価に扱われていて、映画を豊かにしている。また、長回しは人物だけを切り取るよりも周囲の空間を入れたほうが「さまざまな情報を受け取れて画が保(も)つ」という話をカメラマンとしたことがあります。

その一方、人物の仕草や動作の魅力もたくさん取り込む。冒頭のリトグラフの作業風景。事後のユリの部屋での美しい肢体でのうろうろ。ベッドで跳びはねるえんちゃん。大抵の作品では省略されてしまいそうな時間をそのまま届けてくれることで、その場の空気がこちらまで伝わってくるようです。

監督の井口奈己さんは、「人が普段注視することのない時間」を描くことに興味があるんだと思います。ユリが自宅に帰ってきて、上は肌着、下はタイツという半端な姿でタバコを吸う場面。俺には絶対切り取れない時間です。単純に女性がその格好になる瞬間を見たことがないし、知らないから。そういう、他人が見ることができないひとりの時間をたくさん描いている映画でもあります。

恋愛映画ってカップルの2人にフォーカスされることが多いけど、この映画は幸せそうな2人の裏でひとり寂しい思いをしている人や、2人からひとりになった後の寂しさ、余韻を描くことに多くの時間を割いている。そう、えんちゃんの存在ですよね。蒼井優がかわいすぎます。永作博美が卑怯(ひきょう)です。ダッフルコート松ケンに黄色オレンジ忍成修吾。まぁ、観て!

次回は『女っ気なし』。

 

今泉力哉

今泉力哉

1981年生まれ。2010年『たまの映画』で長編監督デビュー。2019年『愛がなんだ』が話題に。その他作品に『his』『あの頃。』『かそけきサンカヨウ』『街の上で』『猫は逃げた』『窓辺にて』『ちひろさん』など。最新作は豊田徹也原作、真木よう子主演の『アンダーカレント』。

Photo:Masahiro Nishimura(for Mr.Imaizumi) Composition:Kohei Hara

▲ WPの本文 ▲

映画監督 今泉力哉のオフビート映画に惹かれて

さらに記事を表示

▼ 広告枠 : singular : article ▼

▼ 広告枠 : singular : article-center ▼

▼ 広告枠 : singular : article-bottom ▼

RECOMMEND

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-cxense-recommend ( trigs ) ▼

FEATURE

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-feature ▼

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-popin-recommend ▼

MOVIE

MEN’S NON-NO CHANNEL

YouTubeでもっと見る

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-movie ▼

REGULAR

連載一覧を見る

▼ 広告枠 : front-page archive singular : common-footer-under-special ▼

▼ 広告枠 : front-page archive singular : fixed-bottom ▼

▼ CXENSE Widget ▼