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佐野亜裕美「海外でちゃんと売れるドラマをつくりたい」【プロデューサー 佐野亜裕美オリジナルインタビュー】

佐野亜裕美「海外でちゃんと売れるドラマをつくりたい」【プロデューサー 佐野亜裕美オリジナルインタビュー】

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TBS時代は『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』『99.9–刑事専門弁護士–』『カルテット』などの作品に携わり、ドラマづくりの現場に居たいからとの理由で移籍したカンテレでは『大豆田とわ子と三人の元夫』を手がけ、多くの作品がドラマ好きの間で高く評価されている。現在は10月24日より放送スタートの新ドラマ『エルピス–希望、あるいは災い–』を制作中。プロデューサーとしてドラマづくりに深い愛と情熱を注ぐこの人にインタビュー。

佐野亜裕美さん

TV PRODUCER / AYUMI SANO

1982年、静岡県生まれ。東京大学教養学部卒業後、2006年にTBSテレビ入社。『王様のブランチ』を経て、ドラマ制作部に異動。『刑事のまなざし』(13年)、『ウロボロス~この愛こそ、正義。』『おかしの家』(ともに15年)、『99.9–刑事専門弁護士–』(16年)、『カルテット』(17年)、『この世界の片隅に』(18年)などをプロデュース。20年6月に関西テレビ放送に転職し、『大豆田とわ子と三人の元夫』(21年)、『17才の帝国』(22年/NHK ※業務委託)を手がける。


このドラマはどうしてもつくりたかった

――佐野さんはこれまでにプロデューサーとして数々の話題のドラマを手がけてきました。プロデューサーは作品づくりにおける総責任者だといわれますが、あらためてお仕事の内容について教えてください。

プロデューサーと監督の仕事の違いがわからないと言われることはよくあって、そういうときはレストランのオーナーがプロデューサーで、シェフとか料理長が監督ですと説明するようにしています。例えばレストランをオープンするときに「どの立地で、どんな料理を出すのか」「そのためにシェフは誰を雇って、サービスマンはどういう人にするのか」みたいなことを決めるのがプロデューサーで、実際に料理をつくるのが監督です。なので、やる仕事としては、企画を立案して、キャスティングをして、スタッフィングをして、作家さんと一緒に台本をつくって、編集とかMAといったポストプロダクション作業にも立ち会います。要するに、ドラマづくりの最初から最後までずっと通しで関わって、作品に対してすべての責任を負うのがプロデューサーの役割です。

――佐野さんは現在、10月24日よりスタートする新ドラマ『エルピス–希望、あるいは災い–』(カンテレ・フジテレビ系)の制作に関わっています。実在する冤罪(えんざい)事件に着想を得た作品だそうですが、どういった経緯で企画が立ち上がったのですか?

これは相当レアケースなんですけど、2016年に知り合いから脚本家の渡辺あやさん(映画『ジョゼと虎と魚たち』、NHK連続テレビ小説『カーネーション』など)を紹介していただいたんです。それで、渡辺さんに連ドラを一緒にやりたいとお願いして、最初は「ラブコメをやろう」みたいな感じで話をしていたんですけど、イマイチ盛り上がらなくて。そうしたら渡辺さんから「今、あなたが本当に興味あるものって何なの?」と聞かれて、私はもともと法学部にいたこともあって、日本の法制度とか犯罪についてすごく興味があったし、死刑囚の日記を読んだり、裁判の傍聴とかもよく行ったりしていたので、その話をしたら「本当に興味があるものに取り組むべきじゃないのか」と言われたんです。そこから実在する冤罪事件をいろいろ調べ、台本をつくっていきました。

――企画自体は6年も前に始まっていたんですね。

そうなんです。ただ、企画はなかなか通りませんでした。いろいろなところに持ち込んで話を聞いてもらったんですが、着地できず…。それでもどうしてもつくりたかったので、渡辺さんに「何も決まっていないけど、脚本を一緒につくりませんか?」とお願いして、3話ぐらいまで進めたところで「キャスティングだけでも先に」と思い、長澤まさみさんのところに持っていったら「絶対やりたい」と言ってくれたんです。そこからいろいろ動き始めたんですけど、成立するまでには至らなくて、そのうち私がTBSを辞めることになり、次に移籍するところでは絶対にこのドラマを成立させたいと思っていて、カンテレ(関西テレビ放送)が「これはやるべき作品だ」と背中を押してくれました。それも転職の大きなきっかけです。


ひとりが変われば世界が変わる

――TBSを辞めて、カンテレに転職したエピソードは面白いなと思うのですが、どういった流れでそうなったのですか?

一番大きな理由は、2018年の末に非現場に異動になったことです。組織として、人事の意図はいろいろあったと思うんですけど、私はずっとドラマの現場に関わっていたかったので、やっぱりものすごくショックで。そのときにある先輩から「ドラマ部に戻りたいんだったら社内政治をしたほうがいい」というアドバイスもありました。ドラマをつくりたくて入社して実際にドラマをつくっていたのに、そこに戻るのにもっとも苦手な社内政治をしなければならないというのは当時の自分にとってはのみ込みづらいことでした。限られた時間や労力をドラマづくり以外のことに費やすのはやめようと思い、辞めることを決めました。それで、どこかでどうにか『エルピス』を成立させようと。

――そういう事情があってのことだったんですね。

それが2020年だったんですけど、渡辺あやさんと本当に2人だけで企画を抱えて、脚本もすでに最後まで書いてもらっていたので、ほかの作品をやっているときもずっとそのことが気になっていましたし、『エルピス』を世の中に届けなかったらプロデューサーとしてこの先、生きていくのは難しいだろうなって思っていたから、ようやく形になって本当に感慨深いです。

――ドラマづくりの魅力や面白さというのはどこにあるんですか?

大きく3つあって、ひとつ目はこの世界に生み出された脚本を初めて読めること。2つ目はドラマをつくるのにスタッフやキャスト含めて100人ぐらいの人たちが関わるんですけど、すべての力が合わさって完成したときの喜び。3つ目は完成した作品が視聴者のもとに届いて、何かしらの反応をいただけたときですね。以前、「ドラマを観て、人生が変わりました」というお手紙をいただいたことがあるんですけど、あれはとてもうれしかったです。それ以外にも、いろいろな人の話を聞いたり、いろいろなところに取材に行けたりするのは楽しいですね。例えば『大豆田とわ子と三人の元夫』のときは、とわ子がハウスメーカーの社長で、洋服が好きという設定だったので、業界のことを調べたり、ファッションを調べたりしました。そうやって何でもいろいろ学べるのがすごく自分の性に合っていると思います。

――今、ドラマによって人生が変わった人のお話が出ましたが、つくり手として、ドラマの力とか物語の力みたいな部分についてはどう考えているのですか?

例えば『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』(16年)というドラマでは、言葉が呪いになるということが描かれていたと思うんですけど、あれを観てラクになったとか、価値観が変わったという人はたくさんいたと思います。でも、私の場合は、ドラマをつくるときはいつも誰かひとりのことを考えてつくるようにしています。『大豆田とわ子』のときは私の友人で、彼女はドラマに出てくる[綿来(わたらい)]かごめちゃんのモデルになっているんですけど、独身なので「何で結婚しないの?」とよく言われていて、そのたびに戸惑うような表情をしているのがイヤで。だから、彼女が生きやすくなるような社会に少しでも寄与できるようなドラマをつくろうと思って始めました。

――すてきな話ですね!

テレビ局でよく言われるF1層とかF2層とか、そういうターゲット層じゃなくて、顔と声がわかるひとりの視聴者のことを考えながらつくるということを割と心がけるようにしています。その人自身とか、その人を取り巻く環境が変わったなと思えたらもうそれで世界は変わるので。バタフライエフェクトじゃないですけど、ひとりが変われば世界が変わると思うので、そうやってこれからも作品をつくっていきたいですし、それって意外に侮れない力になったりするんですよね。

「顔と声がわかるひとりの
視聴者のことを考えながらつくる」


海外でちゃんと売れるクオリティのドラマを

――日本では若者のドラマ離れみたいなことが言われていますが、一方でアメリカや韓国などを見ると、世界中で大ヒットするような作品が生まれています。このことについてはどう思いますか?

私、海外ドラマが大好きなんですけど、やっぱり予算がひと桁、二桁違いますよね。それって単純に豪華なセットをつくれるとか、大勢のエキストラさんを出せるとか、そういうこと以上にいろいろな意味があって、例えばお金があれば撮る時間を増やせるんです。ということは、ワンシーン、ワンカットを何度も何度も吟味してつくれる。これはすごく贅沢(ぜいたく)なことで、日本のドラマの場合、予算が潤沢にあるわけではないからいつもスケジュールに追われていて、今日中にここまで撮らないといけないとなると、たとえ納得していなくても進めていかざるを得ないわけです。そこを考えると苦しいし、つらいんですけど、嘆いていてもしょうがないので、一歩一歩やっていくしかありません。『ベター・コール・ソウル』とかの隣に並んでも恥ずかしくないようなルックのドラマをいつかつくりたいと思って、日々少しずつ頑張っています。

――佐野さん自身、こうなっていたいとか、何か具体的な夢とか目標はあるんですか?

自分がこうなりたいみたいなことは全然なくて。大学時代の恩師に「半年後のことと5年後のことを考えろ」って言われたことがあって、半年後は割といつも何となくイメージしているんですけど、5年後にこういう作品をつくっていたいみたいなことはないんですよね。私自身は好きな脚本家さんとやってみたい企画をあれこれ話をしながら考えている時間が一番楽しいので、そういうことを少しでも長く、たくさんできたらいいなと思います。当面の目標としてはやっぱり海外でちゃんと売れるクオリティのドラマをつくることですね。あとはとにかく映像業界にもっとお金が入ってくるようにして、スタッフにちゃんとお金を払える環境をつくりたいです。

――それは大事ですよね。

日本の映像業界はどんどんシュリンクしていって予算が下がっているのに、物価は上がっているので、そこのやり繰りは本当に大変です。やりがいの搾取にならないようにしたいけど、いい作品をつくるためには妥協できないところもあるし。とにかく日本の映像業界が健全に回っていけるようにするために何ができるだろうかというのはすごく考えていて、そのために自分ができることは最大限やっていきたいと思っています。

 


カンテレ・フジテレビ系 月10ドラマ
『エルピス–希望、あるいは災い–』

初回は10月24日(月)22時よりスタート!

10年にひとりの逸材ともてはやされるも、スキャンダルによって落ち目になったアナウンサーの浅川恵那(長澤まさみ)。ある日、若手ディレクターの岸本拓朗(眞栄田郷敦)から、連続殺人事件で死刑が確定した男の冤罪疑惑を聞き、報道局のエース記者である斎藤正一(鈴木亮平)の協力のもと、事件の真相を追うことに――。脚本・渡辺あや、演出・大根仁、音楽・大友良英。実在する複数の事件から着想を得た、“冤罪”を題材とした社会派エンターテインメント作品。

Photos:Kyouhei Yamamoto Composition & Text:Masayuki Sawada

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