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ドクターマーチンの革新的ワークブーツは、なぜブリティッシュカルチャーのアイコンになったのか?

ドクターマーチンの革新的ワークブーツは、なぜブリティッシュカルチャーのアイコンになったのか?

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時代を超えて愛され続ける “定番”アイテムには、完成されたデザインとしての魅力が詰まっている。ここでは、そんな永久定番名品のディテールから歴史までを深掘り。スニーカーのように履きやすい、エアクッションソールでおなじみのドクターマーチン 1460 8ホールブーツ。労働者のために売り出されたブーツは、いつからストリートのアイコンになったのか?

ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ

現在のドクターマーチンの前身となるR・グリッグス社は、1901年に英国ノーサンプトンにて創業した老舗靴メーカー。戦後のドイツでクラウス・マルテンス博士が考案した、エアクッションソールの製造特許を1959年に獲得。そのソールを使用したワークブーツを、1960年にドクターマーチンと英国風の名前を冠して販売した。


ドクターマーチン 1460 8ホールブーツの歴史

スキンズやパンクスに愛され
音楽シーンと結びついて
英国ストリートスタイルの象徴に

2020年に60周年を迎え、ア ベイシング エイプ®やヨウジヤマモト、マーク ジェイコブスなど記念のコラボプロジェクトも話題を呼んだドクターマーチン 1460 8ホールブーツ。1960年4月1日に生産が開始されたというのが、モデル名の由来だ。このブーツはイギリスのストリートカルチャーを代表するスキンヘッズやパンクスのマストアイテムであり、反骨精神の象徴としてさまざまなアーティストやデザイナーを魅了してきた。

ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲ソールには「DR. MARTENS AIR CUSHION SOLE」の文字がクロスを囲むサークルアイコンで刻印されている。ソール内に格子状の空間をつくることで、弾むような履き心地を実現。

1460 8ホールブーツの最大の特徴でもあるエアクッションソールは、ふたりのドイツ人によって生み出された。第二次世界大戦後、1945年のドイツ、ミュンヘンにて、医学博士のクラウス・マルテンスは、負傷した自分自身の足でも快適に履けるソールを考案。翌年、廃材のホースに空気を入れた、エアクッションソールのプロトタイプを製作。マルテンスは機械工学と当時最先端だったプラスチックの知識を持つ大学時代の旧友、ヘルベルト・フンク博士の協力を得てこの革新的アイデアをアップデート。ふたりは当時最新の素材だったPVCに注目して、やがて空気を含んだ弾むような履き心地のエアクッションソール(通称「バウンシングソール」)が完成。商業的にも成功を収める。

マルテンスはビジネスを拡大するため、1959年に英国などの雑誌に製造パートナーを募集する広告を出す。これが1901年創業の老舗ワークブーツメーカー、R・グリッグス社の3代目、ビル・グリッグスの目に留まり、ビルは製造特許を獲得。

ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲アイレットがシルバーの、オールドスタイルの1460 8ホールブーツ。

R・グリッグス社はエアクッションソールに改良を加え、ウェルトに黄色いステッチを入れた丸みのあるワークブーツをデザイン。この8ホールブーツは1960年の4月1日に生産がスタートし、ビルはエアクッションソールを「Air Wair(エアウェア)」と名づけ、履き心地をアピールする「With Bouncing Soles(弾む履き心地のソール)」のキャッチコピーで売り出した。


1960年代のR.グリッグス社のカタログ
▲初期のドクターマーチンのカタログ。空気を含むソールの断面が、拡大レンズを使ったイラストで描かれている、1460 8ホールブーツを筆頭に1461 3ホールシューズなど、バウンシングソールを搭載したワークシューズが次々と発売されてヒット。

ワークブーツとして2ポンド(1960年代の1ポンドは当時1,008円だが、価値的には現在の2,000~4,000円に相当)で販売されたブーツは、従来のブーツに比べて履き心地がよく、工場や建築現場などで働くブルーワーカー(労働者層)に広まった。1960年代のイギリスはモッズ、ロッカーズを筆頭にユースカルチャーが花開いた時代。モッズから派生して、スカやレゲエを愛する白人労働者階級のスタイルとして誕生したスキンヘッズが、1460 8ホールブーツを履いたのは、ある意味自然な流れだった。

1980年代 スキンヘッズ
▲1980年代にもスキンヘッズはリバイバル。そのスタイルは初期と変わらず、足もとは1460 8ホールブーツがお約束だった。

1960年代後半には、ベンシャーマンのシャツにサスペンダーをつけてリーバイス®のジーンズ、足もとはロールアップして1460 8ホールブーツというスキンヘッズを象徴するスタイルが確立。ドクターマーチンブーツがファッションアイテムになっていく。

さらに、モッズグループとしてイギリスでは絶大な人気を誇ったザ・フーのギタリスト、ピート・タウンゼントなどミュージシャンもドクターマーチンブーツを履き始めた(ちなみにザ・フーのロック・オペラを映像化した1975年公開の映画『トミー』には、巨大なドクターマーチンブーツも登場)。また1971年に公開されたスタンリー・キューブリック監督による前衛的な映画『時計じかけのオレンジ』の劇中で、主人公のグループ“ドルーグ”が1490 10ホールブーツをユニフォームとしていたことでも、カルチャー色を強めた。

BOY LONDON(ボーイ ロンドン)
▲1977年にスタートしたパンクの先駆的ショップ、BOY LONDON(ボーイ ロンドン)に通うキッズたち。パンク、スキンズ系のファッションにドクターマーチンブーツをコーディネート。

1970年代にはパンク、ツートーンなど音楽と結びついて、ユースカルチャーがさらに発展。当時のイギリスは不況で若者の失業率が高く、反政府暴動も盛んだった。反骨精神の象徴としてパンクファッションがユース層に浸透、1980年代にはモヒカンヘア、スタッズ革ジャンなどハードコア化していく。このハードコアパンク界の間でもドクターマーチンの1460 8ホールブーツがマストアイテムに。DIYの精神からスタートしているパンクファッションが、ドクターマーチンブーツのカスタム文化にも影響を与えた。

さらに80年代のストリートでは、女子にもドクターマーチンブーツが浸透。1460 8ホールブーツに花柄を描いたり、シューレースをアレンジするなどカスタマイズして履く人たちが登場した。またイギリスにツアーで訪れたアメリカのハードコアバンドが、ドクターマーチンを持ち帰って西海岸に広め、アメリカでもサブカルチャーのアイコンになっていく。

ハードコアパンクの若者たち
▲それぞれのスタイルでドクターマーチンブーツを履くハードコアパンクスの若者たち。シューレースはストレートバーレーシング(平行に通す結び方)がパンクスやスキンズの鉄則。色を変えたり、スタッズでカスタムするなど個性をアピール。ヒールタブにシューレースを通して足首に巻きつけるアンクルウーンドスタイルも流行。

1990年代のブリットポップの隆盛期には、ブラーのデーモン・アルバーンなどが愛用。アメリカではグランジが盛り上がり、ドクターマーチンのファンは増えていった。またフェスティバルカルチャーが定着し、多くのミュージシャンが履いていた1460 8ホールブーツはフェスでも人気を博した。

しかしながらファッションが多様化した2000年代初頭に売り上げが激減。倒産の危機に瀕したため、2002年に生産の拠点をアジアに移転。同時に2003年からはファッションブランドとのコラボレーションを推進して、ドクターマーチンの再生に成功する。2007年にはノーサンプトンに残る唯一のコブスレーン工場にて、ハンドメイドによるMADE IN ENGLANDラインも始動した。

日本では1980年代から原宿のアストアロボットなどイギリス系のインポートショップがセレクト。パンクロッカーやイギリスのファッションが好きな人々がいち早く取り入れた。1990年代初期には、モッズや古着ブームをきっかけにスキンヘッズに傾倒するユース層が登場し、1460 8ホールブーツの人気が再燃。その後もブリティッシュストリートのマストアイテムとして、またコラボレーションなどを通して、多くの若者たちに支持されている。

ドクターマーチン 1460 8ホールブーツのディテール

バウシングソールにイエローステッチ、
ブラック×イエローのヒールタブもアイコン!

1960年の初代1460 8ホールブーツはチェリーレッドだったが、やがてブラックが登場し、ストリートの定番として浸透。アイレットの色が変わるなどのマイナーチェンジはあるものの、スムースレザーアッパーにドクターマーチンエアクッションソール、ウェルトのイエローステッチやロゴ入りのヒールタブは発売当初から変わらず。

Dr.Martens
1460 8HOLE BOOT

ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲[8ホール ブラック]ブーツ(ドクターマーチン)¥26,400/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン
ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲刻印のとおり、耐油性、耐酸性、耐摩耗性を備えたエアクッションソール。その柔らかさは、革底が一般的だった当時のイギリスのブルーワーカーたちに衝撃を与えた。

ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲ウェルトに目立つ黄色のステッチを入れて、ひと目でドクターマーチンとわかる仕様になっている。
ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲ブーツの外側にブランド名をつけるのも画期的なアイデアだった。ビル・グリッグスの手書き文字をベースにしたと言われている。

MADE IN ENGLANDバージョンはココが違う!

初代モデルが生産された英国ノーサンプトンのコブスレーン工場で、職人による手仕事で生産されるヴィンテージライン。ブラックとオックスブラッドの2色展開で、アッパーには滑らかで耐久性に優れたクイロンレザーを使用しているのが大きな違い。


ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲[8ホール MADE IN ENGLAND]ブーツ(ドクターマーチン)¥36,300/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン
ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲[左]ソールパターンもレギュラーとは若干異なり、トレッドラインが細く、色も濃い。[右]履き口が切りっぱなしなのも大きな特徴。刺しゅうの文字色もゴールドに近い。

1460 8ホールブーツの定番カラー&新作をチェック!

ブラックのほか、スキンヘッズの間でブレイクしたチェリーレッドはもちろん、グリーン、ホワイト、イエロー、ネイビーの6色が定番カラーとして展開されている。そのほかにもシーズンの新作が多数登場し、1460 8ホールブーツのバリエーションは目を見張る充実ぶり。


ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲[チェリーレッド]ブーツ(ドクターマーチン)¥26,400/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン

チェリーレッドはドクターマーチン独特のカラーで、スキンヘッズのアイコンカラーとしてもおなじみ。ブラックに次いで人気の高い定番色。旬のアメカジ系ファッションとも好相性の注目カラーでもある。

ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲[グリーン]ブーツ(ドクターマーチン)¥26,400/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン

伝統的なブリティッシュスタイルを彷彿とさせるグリーン。パンキッシュなファッションにもトラッド感を添えてくれるのが魅力。タータンチェックアイテムとも相性がよく、モード系のスタイルにもおすすめ。


ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲[ホワイト]ブーツ(ドクターマーチン)¥26,400/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン

スニーカー感覚で履けるホワイトは、ストリート系のファッションと相性抜群。夏のショーツスタイルにも合わせやすく、セットアップにエッジをきかせたいときなどにもってこい。

ドクターマーチン 1460 8ホールブーツ
▲ブーツ(ドクターマーチン)¥26,400/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン

2022年春の新作でトレンド感のあるブラック×グレーのカラーブロックが登場。アウトドアシューズのようなミックスカラーのシューレース、トップだけイエローのアイレットがアクセント。エアクッションソールもダークトーンに変え、コーディネートしやすい1足に。

問い合わせ先

ドクターマーチン・エアウエア ジャパン
TEL:03-6746-4860


みんなのドクターマーチン 1460 8ホールブーツコーディネート

瓜坂拓海さん/スタイリスト

瓜坂拓海さん/スタイリスト

「7年ほど前にMADE IN ENGLANDを店員さんにすすめられて、当時気分だったこともあり1460 8ホールブーツを買いました。スイス軍のカモ柄パンツで武骨さを出しながらも、オーラリーのキルティングジャケットやイレニサのスウェット、エッセイのマフラーなどモダンなアイテムをチョイスして品よくコーディネート。アイヴァンのクリアフレームの眼鏡で知的なムードを添えました」

瓜坂拓海さん/スタイリスト

「誰もが知っていて、年齢を問わずに身につけられるようなイメージが永久定番名品にはあります。ベースの形がしっかりしているので、コラボなどでもすぐに1460 8ホールブーツとわかるところがスゴイ。色、柄、素材とバリエーションがめちゃくちゃ豊富で、いい意味でマーチンっぽく見えないモデルもあったりして、いつ見ても新鮮。今後、別のバリエーションにも挑戦したいと思います」


渕上カンさん/スタイリスト

渕上カンさん/スタイリスト

「年中身につけたいアイテムが僕にとっての永久定番。1460 8ホールブーツもそんなアイテムのひとつで、昨年オールブラックのMONO(モノ)を買いました。きょうはパラッパラッパー×ウィンダンシーのコラボスタジャン、リーバイス® エンジニアード ジーンズとコーディネート。パーカはGAP、ハットとサングラスは古着です。スキンズやパンクなどカルチャー色が強いアイテムですが、それをわかったうえで、自分らしい90年代後半のストリートスタイルに落とし込みました」

1460 8ホールブーツ

「1460 MONO 8ホールブーツは、通常イエローのステッチが黒。ソールやヒールタブも黒だから、通常のモデルよりも合わせやすいと思って選びました。スタイルが限定されず、マルチにコーディネートできるのが魅力です」


Photos:Erina Takahashi(still) Stylist:Takumi Urisaka Composition & Text:Hisami Kotakemori

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僕らの永久定番名品ファイル

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