すぴんおふ連載 磯部磯兵衛物語

第二十二話 〜勝手に「もっず」しやがれ!〜

 

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モッズって何で候?

メンズのモードにおいて繰り返し取り上げられるスタイルが「モッズ」だ。ルーツは、好景気に沸く1950年代末のロンドン。

 その頃、中産階級の白人の若者の間では先鋭的なイタリア系スーツを愛用するきれいめなスタイルが流行していた。彼らはモダンジャズを好んで聴いていたことから“モダニスト”を自称。ヨーロッパ大陸に憧れてロンドンのフレンチクラブに通い、ゴダールの映画『勝手にしやがれ』のジャン・ポール・ベルモンドなどをお手本にしていた。

 60年代になるとモダニストがメディアに紹介され、ファッションやクールなライフスタイルの体現者として“モダーンズ”=略して「モッズ」と呼ばれるようになる。その名の通り、最新・最先端のものにこだわり貪欲に取り入れ、ベスパやランブレッタなどイタリア産のスクーターもその一つだ。当時はグループサウンズの隆盛期で、ビートルズなどの人気バンドがモッズスーツを着たことも流行に貢献。しかし66年頃に“ピーコック革命”が起こるとブームは終焉、一部のワーキングクラスのモッズは“スキンズ”に流れる。

 1977年、パンクをきっかけに様々なファッションや音楽がリバイバルする中、ポール・ウェラー率いるザ・ジャムがデビューするとモッズも再生。79年に公開された映画『さらば青春の光』が後押しして“ネオ・モッズ”旋風が吹き荒れる。ロンドンでは「モッズ・メーデー」なるイベントも開催。80年代はポール・ウェラーの新ユニット、ザ・スタイル・カウンシルのビデオを通してモッズカルチャーが世界に波及した。

 日本でも60年代にグループサウンズブームが起こり、モッズが紹介されるが、本格的な上陸は80年代。81年には日本でも「モッズ・メーデー」が開催されると以後ストリートでモッズは根強く生き続け、90年代初頭のポスト渋カジ期に再び脚光を浴びる。95年にはパリとミラノのランウェイで、グッチのトム・フォード、マーク・ジェイコブス、ポール・スミスなど複数のデザイナーからモッズスタイルが同時に提案され、モード界にも一大モッズブームが起こった。

 2004年にはモッズ・カルチャー生誕40周年イベント「モッドストック・イン・ロンドン」が催され、新旧モッズが集結。様々なメゾンに取り上げられ、ファッションシーンに常に存在するアイコンになっている。ブリティッシュが脚光を浴びている特に今季は、トラッド×ミリタリーのハイブリッドでもある「モッズ」が再注目されている。

「モッズ」キーワード集

フレッドペリー ウィンブルドン3連覇を果たした英国人テニス選手、フレデリック・ジョン・ペリーが引退後に始めたスポーツウエアブランド。月桂樹をアイコンにして1952年に創設された。タイトフィットや衿のラインなど先駆的なデザインで、60年代からモッズ愛用のアイテムに。

『さらば青春の光』 元祖モッズバンドとして名高いザ・フーの名盤『四重人格』をベースにした、モッズの青春映画。“ロッカーズ”との闘争も含め、オリジナルモッズのライフスタイルを描く。

モッズスーツ 細身の3つボタンスーツがモッズの定番。オリジナルモッズはサヴィルロウなどのテーラーで仕立てるのが基本だった。東京では梅ヶ丘の「ナミキ洋服店」と「洋服の並木」が有名だ。

モッズパーカ M-51などのミリタリーパーカの総称。高級なイタリアンスーツでスクーターに乗るとき、服が汚れるのを防ぐために米軍放出品のフィールドパーカを羽織り始めたのが由来。

ランブレッタ&ベスパ モッズ御用達のスクーター。ミラーやライトでのデコレーションが流行した。『さらば青春の光』のジミーの愛車はランブレッタ150Liシリーズ3。ちなみに「ベスパ」はイタリア語で「スズメバチ」の意味。

レディ・ステディ・ゴー 1963年に放映がスタートした音楽専門番組。毎週金曜夕方にモッズ好みのバンドやソウル、R&Bミュージシャンが出演。スタジオで踊る観客にはモッズのファッションリーダーたちが詰めかけ、ファッションやダンスステップのお手本になった。85年、東京・渋谷に同名のショップがオープン。日本のモッズファッションの普及に貢献した。(2014年閉店)

モータウン デトロイト発の黒人音楽レーベル。60年代にアメリカで一世を風靡し、モッズに愛された。マーサ&ザ・ヴァンデラスの『ヒート・ウェイブ』は、ザ・フーもザ・ジャムもカバーした。

磯部流、モッズスタイル!

「ブリティッシュテイストを、グレンチェックパンツで取り入れたで候! モッズパーカはファー付きが気分。“磯兵衛ワッペン”でカスタムして個性を出すのがモッズというものでござるよ。細いネクタイとサイドゴアブーツも注目のモッズアイテム」

漫画:仲間りょう Text:Hisami Kotakemori
参考文献:『ザ・ストリートスタイル』(グラフィック社)『まるごとモッズがわかる本』(枻出版社)

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